便利にしすぎると、店から顔が消える。 の挿絵

そう言うと、少し大げさに聞こえるかもしれません。

でも、作りながらずっと考えていたのは、そこでした。

クチコミ返信は、正直、面倒です。

良いクチコミなら嬉しい。
でも、ちゃんと返そうとすると意外と難しい。

悪いクチコミなら、もっと難しい。

謝りすぎてもいけない。
反論しすぎてもいけない。
無視するわけにもいかない。
何を書いても、誰かに見られる。

店をやっているだけでも、毎日いろいろあります。

仕込みをして、暖簾を出して、目の前のお客様に「いらっしゃいませ」と言う。
発注をして、スタッフの相談を聞いて、数字を見て、明日の準備をする。

それだけで、本来は手一杯です。

そこに、スマホの中の「もうひとつの店先」が現れました。

顔の見えない誰かからの星ひとつに心が折れそうになる。
良かれと思って書いた返信が、言い訳に見えてしまう。
褒めてもらったのに、うまく返せない。
返信しないといけないと分かっているのに、手が止まる。

正直、こんな面倒な仕事、増えてほしくなかった。

それが本音です。

店主はだいたい、前向きなことを言います。

「お客様の声を大切にしています」
「改善の機会と受け止めています」
「より良い店づくりに活かします」

もちろん本当です。

本当ですが、星ひとつを見た直後だけは、少しだけ布団に入りたい。

これもまた本当です。

でも、時代の変化を嘆いても、お客様の足は止まりません。

お客様は、Googleマップで店を探します。
比べます。
迷います。
そして、行くかどうかを決めます。

そこで店が無言なら、無言の店に見える。
冷たい返信なら、冷たい店に見える。
丁寧すぎる定型文なら、顔の見えない店に見える。

だから、向き合うしかありません。

世の中には、AIを使って「クチコミ返信を完全自動化し、作業をゼロにする」とうたう便利な道具がたくさんあります。

それはそれで、必要な場面もあると思います。

でも私は、どうしてもその一歩が踏み出せませんでした。

全部を機械に丸投げして、きれいで冷たい定型文が並んだ店先を、自分の店だと思いたくなかったからです。

便利にしすぎると、店から顔が消える。

でも、人間だけで頑張ろうとすると、現場の体力が持たない。

FRONTCASTが目指したのは、そのちょうどいい間です。

AIに仕込みは手伝ってもらう。
でも、最後の味付けは店がする。

下書きは出す。
でも、その店の言葉に整える余白は残す。

早くする。
でも、人間の気配は消さない。

この距離感が、商売の体温を守るために必要だと思っています。

これから先、生き残る店は、きっと「面倒くささを少しだけ愛せる店」です。

もちろん、全部の面倒を抱え込む必要はありません。

そんなことをしたら、現場が倒れます。

でも、お客様の声に向き合うこと。
まだ来ていない人の不安を想像すること。
自分たちの店がどう見えているかを整えること。

そこまで手放してしまうと、店は少しずつ顔を失っていきます。

FRONTCASTは、店主が一人で怖がりながら文章を抱え込まないための道具です。

同時に、店の顔をAIに丸投げしないための道具でもあります。

魔法のような奇策はありません。

毎朝、店先を掃くように。
暖簾を整えるように。
Googleマップの上を少しずつ整える。

その地味な積み重ねの先にしか、

「あの店、なんかいいよね」

と言われる未来はないのだと思います。

まだ見ぬお客様が、スマホの中で、あなたの店の前に立っています。

その暖簾をくぐりたくなるような、ちょうどいい温度の言葉を整える。

それが、FRONTCASTの信じていることです。