丁寧すぎるAI返信から、店の顔が消えていく。 の挿絵

驚くほど速い。

こちらが少し迷っている間に、もうそれなりに丁寧な文章が出てきます。

しかも、ちゃんとしている。

「このたびは貴重なご意見をいただき、誠にありがとうございます」
「今後のサービス向上に努めてまいります」
「またのご来店を心よりお待ちしております」

はい、立派です。

どこにも間違いはありません。
失礼でもありません。
ちゃんとしています。

でも、なぜか誰もいない。

丁寧なのに、店の顔が見えない。
整っているのに、体温がない。
上手いのに、記憶に残らない。

ホテルのロビーみたいにきれいなのに、誰も出てこない感じです。

いや、ロビーには誰かいてほしい。

AIに任せたい気持ちは、よく分かります。

現場は忙しいです。

毎回、良いクチコミにも悪いクチコミにも、ちゃんと向き合って返信を書く。
簡単なようで、実際にはなかなか大変です。

しかも、低評価の返信は気を使います。

言いすぎてもいけない。
謝りすぎてもいけない。
放っておくわけにもいかない。

そんな時、AIがすぐに文章を出してくれるのは、とてもありがたい。

私も、便利なものは好きです。
できれば面倒なことは減らしたい。

人間として、かなり自然な欲求です。

でも、便利さだけを追うと、店から顔が消えていきます。

どの店も同じような文章になる。
どの返信も、同じように丁寧になる。
どの言葉も、角が取れて、きれいになって、誰のものでもなくなる。

それは、ロボット接客に近い。

店には、それぞれ空気があります。

きびきびした店。
柔らかい店。
少し不器用だけど誠実な店。
元気な店。
静かな店。
職人気質の店。
お母さんのような店。

その違いは、言葉にも出たほうがいい。

むしろ、出ないといけない。

AIは、店主やスタッフの代わりに前に出る存在ではなく、その店の言葉を整える裏方であってほしい。

私はそう考えています。

たとえるなら、AIは料理人ではありません。

仕込みを手伝う人です。

素材を切る。
段取りを整える。
下ごしらえをする。

でも、最後に火を入れるのは店です。

味を決めるのも店です。

便利にしすぎると、人間の気配はすぐに薄くなります。
でも、人間だけで頑張ろうとすると、現場は続かない。

だから、その間にちょうどいい場所を作りたい。

FRONTCASTは、AI自動返信ツールというより、店の言葉を失わずに返信を続けるための道具です。

AIに任せたい。
でも、ロボット接客にはしたくない。

そのわがままから始まっています。

商売には、少しくらい人間の手触りが残っていたほうがいい。

たとえ少し不器用でも、その店の顔が見える言葉のほうが、私は信じられると思っています。