事実で勝って、印象で負ける返信がある。 の挿絵

店をやっていると、あります。

これは本当にあります。

こちらとしては、言いたくなる。

「いや、それは違います」
「その日はこういう状況でした」
「こちらはちゃんと説明しました」
「それはお客様の勘違いです」

頭の中では、もう返信文が出来上がっています。

当日の状況。
スタッフの対応。
店側が確認したこと。
相手が見落としていること。
全部書きたくなる。

しかも、かなり詳しく書きたくなる。

こちらにも言い分があります。
店を守りたい気持ちもあります。
スタッフを守りたい気持ちもあります。

だから、反論したくなる。

その気持ちは、とてもよく分かります。

というより、まず人間としては反論したいです。

店主も人間です。
仏像ではありません。
営業時間中に悟りを開いているわけでもありません。

でも、ここがクチコミ返信の怖いところです。

事実で勝っても、印象で負けることがあります。

第三者は、裁判官ではありません。

どちらが正しいかを、細かく検証してくれるわけではない。
防犯カメラを見るわけでもない。
当日の空気を知っているわけでもない。

ただ、Googleマップを見て、この店に行こうかどうか迷っている人です。

その人が読むのは、事実関係の細かさだけではありません。

文章からにじむ、店の態度です。

「あ、怒っているな」
「ちょっと怖いな」
「正しいのかもしれないけど、行きにくいな」

そう思われたら、店側が事実として正しくても、印象としては損をします。

これが、クチコミ返信の厄介なところです。

正しさと、伝わり方は別です。

もちろん、事実を説明してはいけないという意味ではありません。

明らかな誤解がある場合。
安全やルールに関わる場合。
これから来るお客様にも関係する場合。

必要な説明は、したほうがいいです。

でも、説明の顔つきが大事です。

反論として書くのか。
安心材料として書くのか。

この違いは、読む人に伝わります。

たとえば、

「それは事実と異なります」

と始まると、どうしても戦いの空気になります。

一方で、

「当日はこのような運用をしておりましたが、ご案内が十分でなかった点は受け止めております」

と書くと、印象は変わります。

事実を伝えながら、相手の感じた不快感を軽く扱わない。

この姿勢が大切です。

店を守るために書いた言葉が、逆に店を入りにくくしてしまうことがあります。

スタッフを守るために書いた言葉が、読んだ人には「強い店」に見えてしまうことがあります。

だから、まず受け止める。

相手が感じた不快感は、その人にとっては事実です。
そこは軽く扱わない。

そのうえで、必要な説明があるなら、短く、落ち着いて書く。

言い訳ではなく、背景として。
反論ではなく、安心材料として。

そして最後に、次に読む人が不安にならないように整える。

クチコミ返信は、勝つための文章ではありません。

来店前のお客様に、

「この店はちゃんと向き合う店だ」

と思ってもらうための文章です。

言い負かすより、安心してもらう。

そのほうが、店はちゃんと守られます。